京都・清水寺で発表される毎年恒例の「今年の漢字」。2023年は「税」でした。
筆者も個人事業主ですから、最近の税制関連の話題には色々と思うことがあります。その思いをブスブス焦げ付かせつつ、今回はSteamで配信されている『Taxer Inc』というゲームを紹介していきたいと思います。
これは軍隊の代わりに、経済力で周辺諸国を支配しようという内容のゲームです。
なぜ国外に巨額支援するのか?
自国民から徴収した税金を外国への投資に使う。最近、この行為自体に大きな非難があります。「どうして自国に税金を使わないんだ!?」と。
本当にザックリ言ってしまえば、自国の企業が国外へ進出する足がかりをつくるためです。
たとえば、日本政府がA国に漁業関連施設への支援を行うとします。しかし昔ならともかく今の時代、単にお金だけを渡すということはまずなく、日本の水産企業が進出することを前提に支援……というより実質的な投資をするわけです。
しかし、このA国のネガティブリスト(外資の出資に関する規制)に「冷凍倉庫分野の外資参入は認められない」という項目があったらどうでしょうか。
水産業に冷凍倉庫は必要不可欠。せっかく巨額の支援をするのだから、ここの部分は多少でも緩和してもらわないと困ります。というわけで日本とA国との外交の結果、A国の冷凍倉庫分野の外資規制は0%から51%に改定されました。これなら外資独占は無理でも、外資がイニシアティブを取ることができる合弁会社を作ることができます。
お分かりでしょうか? 国外への支援は、その国の内政に(敢えて悪い表現を使えば)口を出せるきっかけになるのです。
対策を施さないと革命が…
確かに「行き過ぎた支援」は考えものですが、もしも日本政府が海外への支援を完全に止めてしまった場合、最も大きな損失を被るのは他でもない日系企業(中小零細も含みます)。縮小する一方の国内市場のみで数少ないパイを掻き集めるしかなくなってしまいます。
今回筆者がプレイした『Taxer Inc』は、非常に簡略的ながらもそれをよく表現しています。
プレイ開始前、「ヨーロッパ連合」と「アジア連合」と「アフリカ連合」を選択し、さらにその域内の国をひとつ選びます。ゲームの内容は、国民から税金を集めつつ国外へ投資し、軍事力ではなく経済力で域内に覇を唱えるというもの。ところが、これがやってみると結構難しい。
まず、プレイヤーは「どこから税金を取るか」を判断する必要があります。酒、タバコ、パスポート発行、さらにはピアスの穴を開けるための手術にも税金をかけることができます。「中小企業にライセンス発行されたレジの設置を要求します」という項目もあり、これってもしかしてインボ……?
ともかく、政府はありとあらゆる手段で税金を掻き集めます。しかしこのゲームには「革命」というバロメーターがあり、これが7万に到達すると政府が転覆してしまいます。それを少しでも抑えるために法律を制定したり、補助金を設けたり。若者がiPhoneを購入するための補助金も制定可能です。
軍事力を使わない戦争
同時に、議会にマイノリティ議員枠を設けることも重要です。少数人種やLGBTQの議員を一定数入れることで、国民の不安を抑制します。たまに来る嘆願を聞いてやることも重要です。
ただしこのゲームの革命バロメーターは、基本的には上がる一方。その前に域内の国全てを併合しちまいましょう!
どこに課税するか、そしてその結果の富をどこに費やすのか。この原理を各国が導入していたとしたら、先にあるのは「軍事力を使わない戦争」です。
ここで現実世界の話に移ります。支援即ち実質的な投資の対象になっている国も、ただ黙ってそれを受け入れるわけではありません。たとえば中所得国にありがちなのは「小規模小売店に対する外資規制」です。仮にこれを外資独占OKにしてしまうと、漫画「あしたのジョー」の林屋や米ドラマ「大草原の小さな家』」オルソン商店のような個人経営の店が、外資系コンビニに潰されてしまう可能性も出てきます。これは地域にとっては大変な損失です。
どこを攻め、どこを守るか。あるいは、敵(外国)の条件の一部を敢えて呑み込み、自国民に最大限のレバレッジが享受されるように図るのか。そのために数々の法令が早いペースで制定されることもありますが、無論日本も例外ではありません。
税金とは何か?
自国民の血の結晶である税金を国外投資に使い、域内の王者になることを目指す『Taxer Inc』。「税金とは何か?」を考える上で、実はこれほどピッタリな作品もないのではと思います。
いやー、我ながらオツなゲームを発掘しちまったと思いますよ!年末年始休暇の暇な時を過ごす相棒としても、このゲームは大活躍必至。Steamにて早期アクセス配信中です。