TGS 12: マンCの逆転劇のような感動をゲームでも…『FIFA 13』牧田和也氏に聞く | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

ハードコアゲーマーのためのWebメディア

TGS 12: マンCの逆転劇のような感動をゲームでも…『FIFA 13』牧田和也氏に聞く

海外ではここ数年でNo.1サッカーゲームの地位を不動のものとし、日本でも毎年プレゼンスを高めているのが、EAのFIFAシリーズ。その最新作『 FIFA 13 』について、東京ゲームショウに際し、シリーズの開発で重要な役割を担う、 牧田和也 氏に話を聞くことができました。

連載・特集 インタビュー

海外ではここ数年でNo.1サッカーゲームの地位を不動のものとし、日本でも毎年プレゼンスを高めているのが、EAのFIFAシリーズ。その最新作が、10月18日に発売される『FIFA 13 ワールドクラスサッカー』です。東京ゲームショウに際し、シリーズの開発で重要な役割を担う、牧田和也氏(KAZ MAKITA、FIFAシリーズ エグゼクティブ・プロデューサー/バイスプレジデント)に話を聞くことができました。ゲームはもとより、サッカーそのものへの熱い思いがうかがえる内容となっています。

* * * * * * *

Game*Spark: さきほどプレイさせてもらったんですが、ファン・ペルシにボコボコにされました……。プレイしたところまだアーセナルにいたようなんですが、製品版ではマンチェスター・ユナイテッドに?

KAZ MAKITA: あれは体験版をつくったタイミングの問題で、製品版ではもちろん移籍しています。当然、香川選手もユナイテッドです。まあ僕はアーセナルファンなので、個人的には移籍してほしくなかったんですが(笑)。でも今はペルシがいなくてもがんばってますね。予想以上に健闘していると思ってます。

Game*Spark: アーセナルがお好きというのは、やはりヴェンゲル監督がお好きという?

KAZ MAKITA: そうですね。彼の思考というか、チームとしてどれだけ機能するか。後は若い選手を連れてきて育てるというところなんかも好きですね。宮市選手も活躍して、早くアーセナルに戻ってきてほしいですね。


Game*Spark: ゲームについて、まず『FIFA 13』の概要を教えてください、

KAZ MAKITA: プレミアリーグでマンチェスター・シティがQPRと戦った最終節、あるじゃないですか。シティが勝つと何十年ぶりの優勝ですよ。その試合、一点差でシティが負けてた。その時点でマンチェスター・ユナイテッドは試合が終わってて、もう優勝したと思ってる。シティファンはがっかりですよね。そこから一点、二点と返して、劇的な逆転勝利でリーグ優勝を決めたんです。シティファンは夢を見てるかのような状況で、みんな泣いちゃってるんです。現実のサッカーではこういう想像し得ないことがことが起きて、そこにはみんなの思いとか願い、そして感動があります。ゲームでも想像しえないことが起きて、それぞれのプレイヤーにストーリーが生まれたら、そういう思いを込めてつくりました。
※イングランド・プレミアリーグ(2011-2012)シーズン。最終節でマンチェスター・シティがロスタイムに2点を挙げ3-2でクイーンズ・パーク・レンジャーズに逆転勝利。44年ぶりのリーグ優勝を飾った。同節でマンチェスター・ユナイテッドは1-0と勝利し、シティが引き分けでも優勝という状況だった。

Game*Spark: 想像しえないこと、というのはこれまでより不確定な要素が増えるということでしょうか?

KAZ MAKITA: 不確定というより、様々な状況で様々なものが反映されるようになる、ということですね。例えば、今までトラップは分かりやすいミス以外、ほぼ100%成功していたんです。でも実際のサッカーでは100%成功するわけではない。そのトラップひとつをとっても、ボールの向きやスピードなど、トラップしたときそのボールがどういう動きをするかで、全く違った結果が生まれますよね。

Game*Spark: 様々な要素が、様々な結果に反映される。

KAZ MAKITA: そうですね。今回あえて確率が100%だったのをちょっと崩したんです。ルーズボールがあることで、また違った結果が生まれる。本来あるべき要素がゲームに入ってきたという感じですね。良い結果が出るためには、選手の能力値、タクティクスなどが影響してきます。

Game*Spark: シリーズをプレイしたことのない方へのアピールポイントを教えてください。

KAZ MAKITA: 初めてFIFAだったりサッカーゲームを触るとき、まず操作するボタンが多すぎて分からない、という方もいると思うんです。そういった方に対しては、ボタンを二つ押せば遊べたりとか、スキルゲームといって、試合前にトレーニングできる要素を入れました。今までやったことない方も、ミニゲーム的な遊びからいろんなことを覚えていただけると思います。

Game*Spark: 特徴のひとつ「タクティカル・フリーキック」を具体的に教えてもらえますか?

KAZ MAKITA: フリーキックのシステムは一新しました。フリーキックって今すごく重要じゃないですか。ユーザーの方からもっと自由に動かしたいという要望もあって、オフォンス側は3人の選手から誰が蹴るかを決めることができる、フェイクで動いたり、いろいろな形ができるようになりました。ディフェンス側は壁の人数を動かしたり、壁を前に動かしたりといったことが可能です。壁を前に動かすとカードが出ることもあるんですが、レフェリーの性格という要素も絡んできます。本当にディープにプレイされる方はそこまで考えてプレイされてるみたいですね。


Game*Spark: 本作では、メッシ選手がカバープレイヤーとして起用されています。メッシ選手といえば、これまで“もうひとつの”サッカーゲームで看板を務めてきたと思うんですが、そのメッシ選手を今回起用した意図というのは?

KAZ MAKITA: メッシ選手を起用するのは『FIFA ストリート』からなんですが、今回『FIFA 13』の特徴である「コンプリート・ドリブル」。よくメッシがやるんです。ほんとうに倒れない。香川選手やナスリ選手もああいうプレイするんですけどね。そういった意味で、メッシ選手は『FIFA 13』のゲーム性にも、今のサッカーのトレンドとも一致する選手といえます。やっぱり見てておもしろい、とんでもないプレーをしてくるじゃないですか。誰も想像していないような一瞬の動き。ゲームでも、バルセロナを使えばそういったプレーを見せてくれるはずです。
※コンプリート・ドリブル―360度自由な方向にボールを動かせる正確なドリブルタッチでタックルを交わし、ディフェンダーに脅威を与える攻撃を展開。あるいは、ターンやシールディングでボールをキープ、より長くディフェンダーを近寄せない。

KAZ MAKITA: 今回すごく変わったと思うのが「おもしろさ」なんです。現実のサッカーに対して、シミュレーター的な精度を上げていく、というのもあると思うんですが、今回は「ゲーム」としてのおもしろさがすごく上がったと思うんです。これまでFIFAをプレイした方から「今回のAI、ほんと変わったね」「何が変わったかわかんないだけど、すごくおもしろいんだよね」という声をいただくんです。これは今回の特徴で「アタッキング・インテリジェンス」といいます。周りの選手がどう動くか、というのをシミュレーションして、今までできなかった「ここに選手が走り込んでくれてたらよかったよね」という実際のサッカーにある動きがゲームの中にすごく出てくる。様々なパターンがあって、そこでゲームとしてのおもしろさがアップしたと思います。
※アタッキング・インテリジェンス―FIFAシリーズ史上、最も洗練されたAIがプレイヤーにスペースを分析する能力、激しくスマートにディフェンスを崩す能力、2プレイ先を読む能力を搭載。ディフェンダーを引き出し、味方にパスコースを与えるランニング、空いたスペースにつけこむなど、状況に応じて適切なスペースに走り込むオルターランやカーブランが可能に。


Game*Spark: AIの進化が、リアルのサッカーに近づくだけじゃなく、ゲームとしてのおもしろさにつながったということですね。しばしばコナミさんの方を「アーケードライク」、FIFAを「シミュレーター寄り」といったりして、僕もそういう表現をしがちなんですが、今回はそれを超えたところで「ゲーム」的なおもしろさが出てきたということですね。

KAZ MAKITA: そういったところで、日本のユーザーさんにも受け入れてもらえるゲームなったと思います。

Game*Spark: これまで10年以上もシリーズに関わってこられて、隔世の感があると思うんですが、かつては中田選手だったり、数えるほどしかいなかった日本人の海外所属選手が、今では数えきれないくらい活躍している。こういった状況はFIFAシリーズにも影響しているのでは。

KAZ MAKITA: すごくそれは大きいと思います。日本の選手が海外に行くと、日本のユーザーが海外のサッカーに触れる機会が増えますよね。そうなったときに、我々のゲームは世界のユーザーに向けてつくってますので、窓口が広がるのかなと思ってます。昨年から起用したカバープレイヤーの長谷部選手、本田選手もそうした意図の一環です。今回、かなり海外の日本人選手の顔のつくりこみを行っていまして。

Game*Spark: それはファンが気になっているところだと思います。

KAZ MAKITA: 先の二人はもちろん、例えば、吉田選手、細貝選手、ハーフナー選手、森本選手、安田選手、宇佐美選手、カレン・ロバート選手と、数々の選手にご協力いただいて、本人の写真を元にゲームに再現しています。まだ全員ではないので、これからもっと増やしていきたいと思っています。(ちなみに香川選手は……)残念ながら、香川選手の顔はまだつくりこんでないんです……。

Game*Spark: ではそれは今後に期待、ということで。


Game*Spark: FIFAシリーズは、毎年リリースすることが義務づけられているようなタイトルだと思うんですが、そこで毎年進化しなきゃいけないというプレッシャーはありますか?

KAZ MAKITA: もちろんプレッシャーはあります。前の年よりおもしろいものを常に作っていきたいので。FIFAの歴史を見てもらえばわかるんですけど、一回下がってまた上がってっていう。やっぱり守りに入ったらダメだと思うんです。大きな作品になるほど変えるのは怖いんですけど、常に新しいことに挑戦していきたいですね。

Game*Spark: 個人的には『FIFA 09』あたりで、来るところまで来たと思ったんです。ここまで来たらもう変わらないと。そこからさらに進化を目指すというのは、大変だったと思います。

KAZ MAKITA: どの部分にフォーカスするかというのは、毎年苦労するところです。実際、やりたいことはまだたくさんあるんです。時間とハード的なスペックがあれば、まだまだ進化する余地はあります。

Game*Spark: 進化というのは、現実のサッカーに近づくような?

KAZ MAKITA: 現実のサッカーに近づくような進化もあると思いますが、やはりゲームとしてのおもしろさが重要なので。見て楽しむものではなく、触って楽しむものですからね。

Game*Spark: 仮の話になりますが、次世代機になったときに進化する余地も十分にあると。

KAZ MAKITA: もちろんパフォーマンスが上がるハードが出てくれば、もっといろんなことができるようになると思います。今はゲームエンジンやAIについても、ギリギリのところで戦ってますから。

Game*Spark: 最初『FIFA 08』で5vs5のオンライン対戦をやったときは、かなり衝撃でした。これで終わりかと思ったら、『FIFA 09』で10vs10、『FIFA11』で11vs11まで行きました。

KAZ MAKITA: いつもオンラインはかなり力を入れているんです。昨年「Head to Head Seasons」という10ディビジョン制のオンラインを導入して、ものすごく評価いただきました。今回はそれをさらにパワーアップしています。初めての方でもディビジョン制なので、いきなりすごく強い人と当たることはない。だれでもオフラインのCPUとプレイするようなつもりで、オンラインに気軽に入っていただけます。

Game*Spark:ディビジョン制が、今までやったことのない方へのアピールポイントとなるんですね。

KAZ MAKITA: そうですね。もちろん経験者の方についてもディビジョン制が有効になってきます。ポイント数でディビジョンが上がったり下がったりするので、常に緊張感を持って試合ができる、一試合一試合が意味のある試合になる、という点で多くの方にプレイしていただいています。

Game*Spark: ちなみに、牧田さんの実力はいかがですか?

KAZ MAKITA: 僕はですね……開発チームの中ではコテンパンにやられてます(笑)。だからFIFAの上級者というわけではないんです。でもそんな僕でも楽しめるのが、この10ディビジョン制なんです。


Game*Spark: 日本向けの実況・解説の導入など、これまで様々な形で日本向けのローカライズを行ってきたと思うんですが、最後に残っていると思うポイントが「選手名の日本語化」だと思うんです。
※今回は実況にはおなじみの西岡明彦氏、解説には初めて元日本代表DF 堀池巧氏が参加。

KAZ MAKITA: これはみなさんにおっしゃっていただいてるんですが、本当にもうタイミングですね。1万5000人ほどの選手がいますから、翻訳の作業にも非常に時間がかかりますし、カタカナ表記をして日本のみなさんが違和感のないものにするというのも大変です。やりたいという気持ちはありますが、そこまではまだ出来ていないのが現状ですね。

Game*Spark: 最後に、プレイされる方へ一言おねがいします。

KAZ MAKITA: 「サッカーゲーム」としてすごくおもしろいものになってきたと思います。いろいろなチョイスがあると思うんで、自分のプレイスタイルを見つけて、現実の欧州サッカーのようなプレイを味わっていただければ。そしてそれを感動につなげていってほしいなあ、と思います。マンチェスター・シティの優勝のようなね。

(c) 2012 ELECTRONIC ARTS INC. 《Kako》
【注目の記事】[PR]

連載・特集 アクセスランキング

アクセスランキングをもっと見る

page top