MMORPGで人生が一変した人々に密着するドキュメンタリー映画「Second Skin」【コントローラーを置く時間】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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MMORPGで人生が一変した人々に密着するドキュメンタリー映画「Second Skin」【コントローラーを置く時間】

GameSparkスタッフが、ゲーマーにぜひオススメしたい映画/ドラマ/アニメ作品を1本紹介する企画「コントローラーを置く時間」。今回は、日本未公開のドキュメンタリー映画「Second Skin」をご紹介

ゲーム文化 カルチャー
MMORPGで人生が一変した人々に密着するドキュメンタリー映画「Second Skin」【コントローラーを置く時間】
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筆者私物の「Second Skin」DVD

ハードコアゲーマーのためのゲームメディアGame*Sparkでは、日々、様々なゲーム情報をご紹介しています。しかし、少し目線をずらしてみると、世の中にはゲーム以外にもご紹介したい作品が多数存在します。

そこで本連載では、GameSparkスタッフが、ゲーマーにぜひオススメしたい映画/ドラマ/アニメ作品を1本紹介していきます。今回ご紹介するのはMMORPGで人生が変わった人々を追う映画「Second Skin」です。

インターネット老人会には限りなく懐かしく、若手ゲーマーには資料映像となる1本

「Second Skin」は『World of Warcraft(WoW)』、『Second Life』、『Everquest/Everquest 2(EQ/EQ2)』といったMMORPGで人生が一変した7人のプレイヤーを追うドキュメンタリー映画で、2008年に北米の一部の劇場で限定公開されていました。日本未公開の作品ですが、2009年にはDVD化されています。

本作では週に40時間以上MMOをプレイするユーザー、『EQ2』で出会いリアルで結婚したカップル、巨大ギルドのマスターを務める青年、ゲーム依存で仕事も家族も犠牲となったユーザーなど、オンラインゲームが良くも悪くも人生に多大な影響を与えた人々へのインタビューを中心に、ヘビーゲーマーの日常生活に密着しその様子を映し出しています。

「エムエムオーアールピージー」という単語はあの頃、まだ謎の呪文扱いだった

映画本編を紹介する前に「Second Skin」が劇場公開された2008年頃の日本におけるオンラインゲーム文化を、一般ユーザー目線で軽く解説します。

その当時「常時接続を使いこなす家庭内LAN構築」、「全日本ハッカ-ズ認定試験」といった見出しが表紙に躍る月刊誌で働いていた筆者ですが、比較的ゲームとは親和性の高い編集部内ですら「エムエムオーアールピージィ??(何を言ってるんだこいつは)」と聞き返され、ゲームページで情報を扱う際には「MMORPG(※Massively Multiplayer Online Role-Playing Game:多人数同時参加型オンラインRPG)」という長ったらしい注釈を必ず記載する……という程度の認知度でした。かなりのゲーム好きやゲームメディア・業界関係者を除けば、MMORPGはほぼ浸透していない“謎の呪文”だったのです。

「テレホーダイ」時間に世界三大MMORPGと言われる『Ultima Online』や『EverQuest』を既にゴリゴリに遊んでいた“偉大なる先人たち”とは違う、“メールとホームページ閲覧程度にしかPCを使わない”といったライト層や女性ユーザーの取り込みに成功したのは、『リネージュ』『ラグナロクオンライン』などの今も知名度が高いタイトル。その後の国内MMORPGブーム火付け役となり、注目を集めていきました。

MMOで幸せになった人、何かを失った人たちが赤裸々に語るインタビュー

MMORPGを通じて人生が変わったという出演者たちは、良かったことも悪かったことも振り返りながら「自分にとってオンラインゲームとは何なのか?」について、カメラへ向かって語り掛けます。

幸せなケースとしては、MMORPGで最高の友情を得た“Andy”のエピソードが挙げられます。彼は3人の仲間と一軒家でシェア生活を送り、日頃から『WoW』で遊び、高難度レイドを行うときは同じ部屋に集まってプレイしていました。メンバーの中では唯一の米西海岸出身で、インディアナまで引っ越してきたAndyの「彼らは自分の人生で一番付き合いが長い親友だ」「この生活がとても大切だし、何も後悔はしていない」という言葉、そしてその真っすぐな目のキラキラ具合にはぐっとくるものがあります。

『WoW』拡張パッケージ発売日には、深夜から4人でゲームショップ前に並びに行く。

『EverQuest』プレイヤーであるHeatherとKevinのパートでは、男女の出会いのエピソードが語られます。二人の関係を「(EQの中で)座って話をしたり、実際に一緒に何かをしに行ったりしていると、電話よりも対話が生まれる」「長く続いた前の恋愛を終えたばかりだった私は、“運命の人”と『EverQuest』で出会いました」と笑顔で話すHeatherですが、その前の彼氏も『EQ』で出会い、2年間交際していたとのこと。

一方のKevinは、過去にゲームを通じて交際した女性が豹変しナイフを振り回してきたり、「3人目として付き合った彼女は子供もいる既婚者で、離婚するはずだったけど結局離婚しなくて。ジェットコースターみたいな人生だよ」などとネトゲ恋愛の経験が豊富な様子でした。

『EQ』で出会い、同棲生活を送ることになった2人

最初の撮影後、同棲のために引っ越した二人にカメラは密着取材を続けますが、目の前の生活にどんどん現実的になっていくHeatherと、話し合いを避け「オンラインの中の快適な環境から一歩出ること」に愚痴っぽくなるKevinのやりとりは、観ていてドキドキします。

個人的には、本作に出演してくれたゲーマーたちの自宅に注目してほしいとも感じました。多くの出演者がCRTモニタを利用し、液晶ディスプレイにしても今やありえないほどの小さいサイズ……。PC横の本棚にはWindows 95や2003年放送開始の海外ドラマ「The O.C.」のパッケージが並んでおり、インターネット老人会の末席に控える者としては、ひたすら懐かしいかぎりです。2000年代初頭のオンラインゲームを取り巻く環境とその空気感が伝わってくる、わりと貴重な映像作品だと思っています。

専門家による分析や数字で示されるオンラインゲームの人間関係

本作が優れているのは、さまざまなデータや関連した業界人のコメントを適宜挟むことで情報を補足し、MMORPGのプレイ経験が全くない人もすんなり理解できる流れになっている点です。

マッチングアプリで出会うのが当たり前の現代と異なり、2008年頃は「ネットゲームで知り合って、なおかつ結婚!?」という驚きの反応がまだまだ強い時代。もちろん筆者の身の回りでも“交際・結婚のきっかけがネトゲ”という実例は複数ありますが、その恋物語が書籍化されたり、ゲームメディアで記事として取り上げられるぐらいにはレアケース扱いでした。

この状況は舞台となる北米・カナダでもさほど変わらないようで「女性ゲーマーの3人に1人は、仮想世界で出会った人と交際している」と夢のある数字を出しながら、その次に「女性ゲーマー1人に対し、独身男性は10人」という現実を突きつけてきます。またMMOユーザー全体の25%が12歳~19歳、60%が20歳~35歳、35歳以上が15%となっており、いわゆる結婚適齢期から考えるとなかなかの競争率です。

一方で「インターネット依存症回復センター」の職員は、オンラインゲームのヘビーユーザーの間での離婚・パートナー関係の崩壊が、大きな問題になっていると訴えるシーンも。「ただちょっとゲームに熱中しているだけ」と自分が思っていても、そのパートナーがゲームに参加していないと「相手の世界から締め出されたような感覚」を強く抱く、“Gaming Widow(ゲーミングウィドウ、未亡人)”になるという表現が印象的です。ゲーマーの多くが男性だったからこそ「未亡人」なのでしょうが、今となっては別の表現を考えたほうがよさそうです。

一大ブームを起こした『Secon Life』はメタバースの走り

「Second Skin」公開から14年が経過し、ヘビーゲーマーの男女比率や年齢層は大きく変化したはずですが、オンラインゲームを舞台に生まれる人間同士の“ドラマ”については、今も根本的に変わっていません。出演者たちがプレイしていた『WoW』『Secon Life』や『EverQuest2』は現在もサービスを継続しており、きっと新たなドラマが生まれていることでしょう。


《稲川ゆき》

プレイのお供は柿の種派 稲川ゆき

ゲームの楽しさに目覚めたのは25歳過ぎてからの超遅咲き。人やら都市やら、何でも育て上げるシミュレーション系をこよなく愛する、のんびりゲーマーです。

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